アラン パトリアルシュ ムルソー ヴィエイユ ヴィーニュ 2022
樹齢: およそ80年。
テイスティング コメント
輝きのある淡いストローイエローの色調。香りは白桃、リンゴ、柑橘類にシダ、ヘーゼルナッツ、アーモンド。少しフリンティな香り。バター、仄かな蜂蜜のニュアンスも現われる。口に含むとフレッシュでまろやか。広がりのある豊かな果実味で、熟した柑橘類にトースト、繊細なスパイスの要素がアクセント。芯のしっかりとした非常にきれいなスタイルで、ミネラル感と美しい酸のバランスが印象的。長熟タイプのムルソーであるが、若いうちからも楽しめる。ジューシーで、長く続く複雑な余韻。
合う料理 オマールエビ、ホタテ、クリーム系肉料理、フォアグラ、鉄板焼き、白身魚のフライなど。
2024年8月試飲
アラン パトリアルシュ
2012年7月に先代のアランが亡くなり、名高いジュヌヴリエールをはじめとするブドウ畑と醸造所は彼の娘であるモーに引き継がれました。ブドウ栽培はモーとその夫マルクの2人で、醸造はマルクが担当。
祖父の代は栽培したブドウのほぼ全量を大手のネゴシアンに販売するのみでしたが、1972年より父、アランが自家元詰を開始したのが今の礎となりました。珍しい深い緑のラベルの上に、アランの名前の頭文字(A)と、彼の妻クリスティアーヌ名前の頭文字(C)を配したラベルはとても印象的な雰囲気をもっています。年間平均生産数はわずか2万本。日本で殆ど知られていないのはその8割以上が国内で消費されるため。毎年パリのワインショップで開催される試飲イベントでは引っ張りだこです。実は日本で彼らのワインを楽しめるのはとてもラッキーなことと言えるでしょう。
除草剤は一切使用せず、畝の下草は春に土中に漉き込んで緑肥として使用。バリックで発酵から行う白ワインにはムルソーとしてのテロワールを素直に表現するため自生酵母による自然な醸造を行っています。粘土質の多い土壌に由来する果実のふくよかさとグラを持つ、ムルソーらしいイメージの中に、マルクが自身の好みだという酸味の美しさを併せ持ったバランス感ある味わい。モンテミリアンの丘の斜面下部の平地に近いクリマからつくられるムルソー ヴィエイユ ヴィーニュは最も古い区画で樹齢 80年近いシャルドネからつくられていますが、その条件にもかからず美しい酸味を湛えているためバランスよくまとまり、繊細な味わいに仕上げています。
コシュ デュリ、アルノ― アント、フランソワ ミクルスキにコント ラフォン。煌びやかな生産者ひしめくムルソー村にあって、実に質素な立ち位置のマルクとモーご夫婦。背伸びせず、人生楽しみながら夫婦二人三脚のワインづくり。時に他人を寄せ付けないほどの気迫にみちた職人による厳格なワインとは違い、いわゆる地元の小さな農家ならではの懐の広さと豊かさを感じさせてくれます。「まずは土壌とブドウを敬うこと。醸造ではそれらを損なうことがないよう、つくり手の個性をそこに加えること。そして飲み手のみなが幸せになれるワインをつくること。私はそのような存在でありたいと思う」とマルク氏。
消費者の喜びこそが自身の喜びでもあるというマルクとモー夫妻。彼らのワインにあれこれと専門的なテクニカルをもって紹介するのは少し場違いなのかも知れない。